人工透析で障害年金を受給することは可能?
障害認定基準の「第12節/腎疾患による障害」において以下の記載があります。
人工透析療法施行中のものは2級と認定する。なお、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無 とその程度、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する
つまり、受給要件をクリアしている人工透析施行者であれば、原則「障害年金2級」に該当するということです。また、日常生活への支障の度合いや合併症の有無によっては、1級の支給が認められる場合もあります。
以上の点から、人工透析で障害年金を受給することは可能です。
腎疾患の障害認定基準
腎疾患の障害認定基準は以下の表のとおりです。
障害等級 障害の状態 1級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの 2級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの 3級 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの
人工透析で障害年金を受給する際のポイント
人工透析で障害年金を受給する際のポイントとして次の2つが挙げられます。
- 初診日を控えておく
- 事後重症請求の場合はすぐに請求準備を進める
- 人工透析での障害年金受給には障害認定日特例がある
それぞれ詳しくみていきましょう。
初診日を控えておく
人工透析は腎疾患を10年~20年と長い期間治療した後に行う方がほとんどです。
そのため、カルテの破棄や廃院などが原因で初診日の証明を取得できなかったり、そもそも初診日を特定できなかったりするリスクがあります。
初診日が特定できない場合、障害年金の請求は行えません。したがって、健康診断など、最初に受診した医療機関名と受診実施日を必ず記録しておきましょう。
事後重症請求の場合はすぐに請求準備を進める
また、長い期間を経て人工透析を行うため、発症から1年6ヶ月以内に人工透析を開始する方はほとんどいません。
初診日から1年6ヶ月後に人工透析を開始した場合は、「事後重症請求」となるため、人工透析の障害年金申請は事後重症請求の方が圧倒的に多いです。
事後重症請求は請求月の翌月分からの支給となり、請求時期が遅れると遅れた月の年金は受け取れません。
そのため、障害年金の請求を素早く行う必要があります。
人工透析での障害年金受給には障害認定日特例がある
「障害認定日」は原則、初診日から1年6ヶ月を過ぎた日です。しかし、人工透析で障害年金申請する際、特例によって障害認定日は人工透析の開始日から起算して3ヶ月経過した日
となります。
したがって、人工透析であれば初診日から1年6ヶ月待つことなく、障害年金の請求が可能です。また、初診日から1年6ヶ月経過した後に人工透析をはじめた場合は、3ヶ月待たなくても、透析開始後すぐに事後重症請求などが行えます。
人工透析の受給事例
人工透析の受給事例は以下が挙げられます。
慢性腎不全による人工透析を受けている方が障害年金を申請。障害厚生年金2級だけでなく、4年間の遡り請求も認められる。
高血圧性慢性腎不全で人工透析を受けている方が障害年金を申請。発症日から投薬治療だったが投薬治療が限界となり、発病して15年以上経過した後、人工透析を開始。
初診日証明がしっかりできたことが功を奏して、障害厚生年金2級の支給が決定。
糖尿病治療を継続していたが、慢性腎不全となり、人工透析治療を開始。障害年金申請をした結果、障害基礎年金2級の受給に成功
人工透析とは?
腎臓機能が正常の10%以下に低下した場合、尿から水分や老廃物を適切に排泄できなくなるため、水分過多や尿毒症によって心不全などを引き起こすリスクがあります。
「人工透析」は、機能が低下した腎臓の代わりに、水分や老廃物の除去を行う治療です。人工透析は1度行うと、永続的に治療を行わなければなりません。
人工透析の種類
人工透析の種類は次の2つです。
- 腹膜透析
- 血液透析
それぞれ詳しくみていきましょう。
腹膜透析
「腹膜透析」は、腹の中のスペースを包んでいる腹膜という膜にある毛細血管と腹腔に透析液を注入し、余分な水分や老廃物を除去する透析方法です。1日に1回~4回程度、透析液を交換する方法や、睡眠中に透析液を腹に貯留する方法があります。
自宅で行うため、通院回数は基本的に月1回程度ですむ他、時間拘束がほとんどなく、行動範囲の制約もほぼありません。
血液透析
「血液透析」は、人工腎臓のフィルターを使用して、血液から余分な水分や老廃物を除去する透析方法です。腹膜透析と違って、医療者に透析を任せるため、安心して治療を行えます。
ただし、1回の治療で4~5時間程度を要する他、週3回通院して実施しなければならないため、時間的拘束がひどく、行動範囲にも大きな制約があります。
まとめ
人工透析を行っている方の場合、原則障害年金2級に該当します。したがって、受給要件さえ満たしていれば、障害年金2級の受給が可能です。
ただし、障害年金は「もらい忘れの年金」ともいわれており、人工透析を行っていて、受給要件を満たしていても申請しなければ、受給できません。したがって、忘れずに申請することが大切です。
また、人工透析は初診日から10年~20年経過してから行うケースも多いため、初診日が分からない場合があります。初診日を把握できないと、障害年金の受給ができません。
初診日が分からなくて申請を諦めているという方は、1度社会保険労務士に相談することをおすすめします。
書類作成に自信がない、医師とのやりとりが上手くいっていなくて悩んでいるのであれば、専門家の意見などを交えながら、一緒に障害年金の受給を目指しませんか?
障害年金の受給を検討されている方はお気軽にご相談ください!