乳がんで障害年金を受給することは可能?
乳がんも障害年金の受給対象です。ただし、障害年金が受給できる可能性があるのは、乳がんによって日常生活や仕事に大きな支障が出ている場合です。
乳がんと診断されたから、申請すれば受給できるというわけではないため、注意しましょう。
乳がんにおける障害年金受給基準
ここでは乳がんにおける障害年金受給基準を次の2項目に分けて解説します。
- 障害認定基準
- 一般状態区分表
それぞれ詳しくみていきましょう。
障害認定基準
乳がんの障害認定基準は次のとおりです。
障害等級 障害の状態 1級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの 2級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの 3級 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの
がんは「悪性新生物」とも呼ばれるため、乳がんの場合も障害認定の基準は「悪性新生物よる障害」が用いられます。
一般状態区分表
「一般状態区分表」とは、内部疾患における障害の中でも、1部傷病で用いられる共通の認定基準のことです。一般状態区分表は次の5段階となっています。
区分 一般の状態 ア 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの イ 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など ウ 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの エ 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの オ 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの
障害等級 障害の状態 1級 著しい衰弱又は障害のため、一般状態区分表のオに該当するもの 2級 衰弱又は障害のため、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの 3級 著しい全身倦怠のため、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの
乳がんで障害年金を受給するためのポイント
乳がんで障害年金を受給するためのポイントとして次の3つが挙げられます。
- 日常生活にどれくらい支障が出ているかを伝える
- 治療による副作用を記載してもらう
- 症状次第では診断書を2枚用意する
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.日常生活にどれくらい支障が出ているかを伝える
日常生活にどれくらい支障が出ているのかしっかりと伝えることが大切です。まずは下記2つの例をご覧ください。
「身体がしんどくて何もできない」
「身体がしんどいため、買い物に行くことも億劫で栄養バランスを考えた調理はもちろん、食事や食器の洗い・片付けが行えない」
具体的な内容を伝えていないと、実際の症状よりも軽い内容で記載されたり、生活に支障が出ていることさえ記載されていなかったりします。
障害年金の受給有無や等級は「日常生活への支障度」で決まるため、「日常生活にどれくらい支障が出ているのか」をできるだけ詳細かつ具体的に医師へ伝えることが大切です。
2.症状次第では診断書を2枚用意する
症状次第では診断書を2枚用意することで、受給確率を高めることができます。がんで障害年金を申請する場合、「血液・造血器・その他の障害用の診断書」を使用するのが一般的です。
しかし、人によっては手術後の後遺症で腕が上がらない、手足が動かしにくいといった支障が生じる場合もあります。そのような支障が生じている場合には「肢体の疾患用診断書」も用意するとよいでしょう。
乳がんの障害年金受給事例
乳がんの発症後、多発転移を繰り返し、摘出手術などを実施、ホルモン治療や抗がん剤治療を行うも、抗がん剤治療の副作用で日常生活に支障をきたす。
障害年金を申請し、障害厚生年金2級を受給
乳房を全摘後、回復するも再発・転移が分かり、障害年金受給を申請。
障害認定3級、事後重症2級で受給が決定。
乳がんの切除後、肺転移が発覚。
抗がん剤の副作用によって日常生活に支障が出たため、障害年金を申請した結果、障害厚生年金3級の受給が認められる。
症状に個人差がありますが、乳がんの発覚・治療後よりも、再発・転移が発覚し、治療の後遺症が出始めてから受給を検討する方が多い傾向にあります。
そもそも乳がんとは?
「乳がん」とは、乳房にある乳腺にできる悪性腫瘍のことです。30代後半から罹患率が急増し、30歳~64歳世代の女性のがんによる死亡者数の1位が乳がんです。
乳がんの罹患者数は2021年予測で約9万4,000人とがんの中で最も多く、9人に1人が乳がんになる時代といわれています。
まとめ
乳がんの方でも日常生活に支障が出ているのであれば、障害年金を受給できる可能性があります。ただし、日常生活にどれくらい支障が出ているかは、人それぞれであり、検査結果のように数値化することができません。
そのため、当記事で紹介したように、どれくらい日常生活に支障が出ているのかをできるだけ細かく医師に伝えて、具体的かつ詳細な内容の診断書を作成してもらうことが大切です。
書類作成に自信がない、医師とのやりとりが上手くいっていなくて悩んでいるのであれば、専門家の意見などを交えながら、一緒に障害年金の受給を目指しませんか?
障害年金の受給を検討されている方はお気軽にご相談ください!