人工透析とは?
人工透析とは、腎臓の機能が低下した患者の体内に蓄積した老廃物や余分な水分を、人工的に体外に除去する治療法です。
腎臓は、体内の不要な物質を尿として排出し、体液のバランスを調整する重要な役割を担っていますが、腎臓病が進行すると、この機能が低下し、体内に老廃物や水分が溜まってしまいます。
人工透析は、この腎臓の働きを代替する治療法として広く用いられています。
人工透析の障害等級
人工透析治療も障害年金の受給対象となりますが、人工透析患者は、障害年金の申請において特別な扱いを受けられます。
ここでは、人工透析の障害等級についてみていきましょう。
原則障害年金2級の受給
障害認定基準の「第12節 腎疾患による障害」によると、次のような記載があります。
ア 人工透析療法施行中のものは2級と認定する。
上記のとおり、障害年金の受給要件さえ満たしていれば、人工透析を受けている患者は、原則として障害年金2級の認定が可能です。
状況次第では1級への認定も可能
障害認定基準の「第12節 腎疾患による障害」によると、次のような記載があります。
ア 人工透析療法施行中のものは2級と認定する。
なお、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。
したがって、症状や検査結果、日常生活の状況によっては、より上位の障害等級1級に認定される可能性もゼロではありません。
ただし、1級認定には、主要症状や人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況などを踏まえ厳格な審査が実施されるため、受給申請する際は医師の詳細な診断書や日常生活状況の証明が必要です。
1級に認定されると、より高額の障害年金を受給できるため、経済的な支援がさらに手厚くなります。
自分が障害年金1級を受給できる可能性があるかどうか知りたい方は、障害年金の専門家である社会保険労務士に相談することをおすすめします。
障害年金受給の基本
人工透析治療を開始したからといって必ず障害年金2級を受給できるわけではありません。
障害年金を受給するためには次の3つを押さえておく必要があります。
- 障害年金の受給要件
- 障害年金の申請の流れ
- 障害年金申請の必要書類
なお、障害年金申請の必要書類は申請者によって異なります。
自分に必要な書類を明確にしたいという場合、障害年金の専門家である社会保険労務士に相談することをおすすめします。
障害年金受給の基本については下記ページにまとめているため、こちらも合わせてチェックしてください。
人工透析で障害年金を受給する際に壁となる「初診日証明」
人工透析患者が障害年金を申請する際、最大の壁となるのが「初診日証明」です。
初診日とは、障害の原因となった病気やケガで初めて医師の診療を受けた日のことを指します。
この初診日が重要な理由は、以下の3点にあります。
- 初診日によって、受給できる年金の種類(障害基礎年金・障害厚生年金)が決まります。
- 保険料の納付要件を満たしているかどうかは、初診日の前日を基準に判断されます。
- 原則として、初診日から1年6ヶ月後が障害認定日となり、この時点での障害の程度が審査されます。
人工透析の場合、多くは糖尿病や高血圧などが原因で慢性腎不全に至りますが、これらの病気は10年から20年かけてゆっくりと進行します。
そのため、最初に受診した病院のカルテが既に廃棄されていたり、病院自体が閉鎖されていたりするケースなどから初診日の特定が非常に困難になることが少なくありません。
初診日の証明をスムーズにするためには、早い段階から医療記録を整理して保管したり、現在通院中の方は将来の障害年金申請に備えて初診日や通院歴を記録したりすることが重要です。
人工透析で障害年金を受給するなら専門家の申請代行がおすすめ!
「申請する負担を軽減させたい」「自分の状態にあったベストな内容で受給申請したい」という方は、障害年金専門社会保険労務士に申請を代行してもらうのがおすすめです。
相談時にしっかりとヒアリングをするため、相談者様の状況に最適な内容で受給申請することが可能です。
専門家に相談すれば、申請に必要な各種書類の作成を代行してくれる他、診断書内容を添削してくれるため、素人が申請するよりも受給確率を向上させられます。
また、医師との交渉ができないという場合は、申請者本人に代わって、医師に診断書作成を依頼してくれます。
障害年金の等級や受給確率を少しでも高めたいのであれば、専門家に障害年金の申請を代行してもらうのがベストです。
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「人工透析 障害等級」でよくある質問
「人工透析 障害等級」でよくある質問は次の3つです。
- 初診日が特定できないので障害年金はあきらめた方がよいですか?
- 障害年金以外の支援制度はありますか?
- 人工透析で障害年金する際の特例は他にありますか?
それぞれ詳しく解説します。
初診日が特定できないので障害年金はあきらめた方がよいですか?
初診日が特定できない場合、初診日の証明方法として以下のような対策が考えられます。
- 過去の診察券や領収書、お薬手帳などの記録を探す。
- 家族や知人に、いつ頃から通院していたかを確認する。
- 健康保険の給付記録(レセプト)を取り寄せる。
- 勤務先の健康診断の記録を確認する。
- 生命保険や損害保険の給付申請時の診断書を探す。
これらの資料を基に、「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成し、初診日の推定が可能です。
ただし、申立書を作成する時間を確保しなければならず、その分だけ申請・受給タイミングが遅れるリスクがあります。
また、これらの方法は専門的な知識が必要となるため、社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。
障害年金以外の支援制度はありますか?
人工透析を受けている方には、障害年金以外にも様々な支援制度がありますが、代表的なものが「身体障害者手帳」です。
人工透析患者の多くは、身体障害者手帳1級に認定されます。
身体障害手帳1級の交付を受ければ、多くの福祉サービスを利用できるようになります。
これにより、医療費の助成を受けられるため、健康保険による自己負担分の医療費がほぼ無料になる場合があります。
さらに、人工透析以外の病気で病院にかかった場合の医療費や処方薬も無料になることが多いです。
また、税金面の優遇措置や、交通面での公共交通機関の運賃割引サービスなどのさまざまな支援を受けられます。
さらに、自治体によっては独自の支援制度を設けている場合もあります。
障害年金とあわせてこれらの支援制度を最大限に活用すれば、人工透析治療生活の質を向上させて経済的負担の軽減が可能です。
なお、詳細な支援内容は自治体によって異なるため、お住まいの地域の福祉課や保健所に相談することをおすすめします。
人工透析で障害年金する際の特例は他にありますか?
人工透析の障害年金は「原則2級の受給」以外にもいくつかの特例があります。
まず、障害認定日の特例です。
通常、障害認定日は初診日から1年6ヶ月後ですが、人工透析を開始した場合は透析開始から3ヶ月経過した日が障害認定日となります。
例えば、初診日が2023年3月25日の場合、通常の障害認定日は2024年9月25日ですが、その前に人工透析を開始していれば、開始から3ヶ月後に障害認定を受けられます。
また、1年6ヶ月以降に人工透析を開始した場合、3ヶ月経過していなくても申請が可能です。
人工透析患者の場合、「事後重症制度」の適用も考えられます。
これは、障害認定日時点では障害年金の対象とならなかった場合でも、その後症状が悪化して障害等級に該当するようになれば、請求時点から障害年金を受給できる制度です。
例えば、初診日から1年6ヶ月後には軽度の腎機能障害だった場合でも、その後人工透析を開始することになれば、この制度を利用して障害年金の請求が可能です。
これらの特例を理解し、適切に活用することで、人工透析患者の方々が必要な支援を受けられる可能性があります。
ただし、これらの特例の適用には細かい条件があるため、申請の際は社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。
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人工透析 障害等級 まとめ
人工透析を受けている患者は、原則として障害等級2級以上に認定され、障害年金の受給対象となります。
また、各種特例も適用されるため、透析開始から3ヶ月後に障害認定日が設定されるなど、通常より早く年金を受給できる可能性があります。
ただし、障害年金の申請には初診日の証明が重要であり、長期にわたる腎臓病の経過から初診日の特定が難しいケースも少なくありません。
そのため、特例を利用する場合や、人工透析で1級を目指す場合、初診日が特定の難しい場合は障害年金の専門家に相談することをおすすめします。
鳥海社会保険労務士事務所は、千葉県流山市を中心に腎疾患や人工透析に関わる障害年金申請代行業務を行っています。
書類作成に自信がない、医師とのやりとりが上手くいっていなくて悩んでいるのであれば、専門家の意見などを交えながら、一緒に障害年金の受給を目指しませんか?
障害年金の受給を検討されている方はお気軽にご相談ください!