甲状腺疾患の障害認定基準は「その他の疾患による障害」
全身・栄養状態、進行状況、日常生活にどれだけ支障をきたしているかなどを総合的に判断したうえで障害認定され、障害年金を受給できます。
したがって、甲状腺疾患であっても障害年金を受給できる可能性は十分にあるといえるでしょう。
甲状腺疾患で認定されるかどうかは「第18節 その他の疾患による障害」で定められている障害認定基準に該当するかどうかで判断されます。
1級
障害の程度・1級に該当する障害の状態は次のとおりです。
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級
障害の程度・2級に該当する障害の状態は次のとおりです。
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級
障害の程度・3級に該当する障害の状態は次のとおりです。
身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの
甲状腺関連の疾患
甲状腺関連の疾患は実に様々なものがありますが、ここでは障害年金の受給事例の多い甲状腺疾患について簡単に触れていきます。
よくある受給事例で多い疾患は次の3つです。
- 甲状腺機能低下症
- 甲状腺機能亢進症
それぞれ詳しくみていきましょう。
甲状腺機能低下症
「甲状腺機能低下症」とは、血液中の甲状腺ホルモン作用が必要よりも低下した状態のことです。
甲状腺機能低下症を発症した場合、一般的に以下の症状が現れます。
- 疲労感
- むくみ
- 無気力
- 寒がり
- 体重増加
- 記憶力低下
- 便秘
- 動作緩慢など
軽度の場合は症状・所見が乏しいことが多いです。
また、重度になると「意識障害」や「傾眠」といった症状が現れて「粘液水腫性昏睡」と呼ばれます。
甲状腺ホルモンは代謝調整だけでなく、子どもの成長・発達や妊娠の成立・維持の働きもある重要なホルモンです。
甲状腺ホルモン機能低下症は、不妊や月経異常、妊娠高血圧症候群などと関連しており、胎児・乳児・障子の成長・発達の恐れにも関連するとされています。
甲状腺機能低下症は大きく原発性甲状腺機能低下症と中枢性甲状腺機能低下症の2つに分けられます。
原発性甲状腺機能低下症
原発性甲状腺機能低下症で最も多いのが「橋本病(慢性甲状腺炎)」です。
橋本病は自己免疫疾患の1つで、主な症状は「甲状腺の腫れ」ですが、大きさがほぼわからないものから非常に大きなものと様々で、首の前部に不快感・圧迫感があるケースもあります。
甲状腺の腫れ以外の症状では、筋力低下や頭髪・眉毛の脱毛、タイ体温、過多月経、徐脈、心肥大、うつ病、アキレス腱の反射低下などがあります。
また、甲状腺機能低下症は「永続性」と「一過性」の2パターンがあり、一過性のものだと、産後一過性甲状腺機能低下症やヨウ素の過剰摂取による甲状腺機能低下症などがあるようです。
中枢性甲状腺機能低下症
「中枢性甲状腺機能低下症」は、大きく分けて次の2つがあります。
- 視床下部性甲状腺機能低下症
- 下垂体性甲状腺機能低下症
「視床下部性甲状腺機能低下症」とは、視床下部が原因で発症する中枢性甲状腺機能低下症のことです。
一方、「下垂体性甲状腺機能低下症」は下垂体が原因で発症する中枢性甲状腺機能低下症となります。
甲状腺機能亢進症
「甲状腺機能亢進症」とは、甲状腺が活発に活動してしまい、甲状腺ホルモンを過剰分泌してしまう疾患です。
「バセドウ病」や「グレーブス病」、「甲状腺炎」など幅広く、単独の疾患ではなく、これら疾患の総称となります。
甲状腺機能亢進症の症状は、疲労感や手の震え、多汗、息切れ、皮膚がかゆい、甲状腺の晴れなどです。
甲状腺ホルモンの分泌量が急激に上昇した場合、高熱や不整脈などの重篤上昇を引き起こし、最悪の場合は死に至ります。
したがって、甲状腺機能亢進症は適切な治療を続けていくことが大切です。
甲状腺機能低下症での障害年金受給事例
甲状腺疾患で障害年金を受給できた事例は次のとおりです。
甲状腺機能低下症の発症をきっかけにうつ病も発症し障害厚生年金2級を受給
甲状腺機能低下症・うつ病・自律神経失調症の症状が混在している状態で障害基礎年金2級を受給
社労士に障害年金申請を代行してもらうのも1つの手段
受給事例をみて分かるとおり、甲状腺機能低下症単独で障害年金を受給しているよりは、うつ病などを併発している状態で障害年金を受給している方が多いです。そのため、「甲状腺機能低下症単独で受給するのは難しいの?」と不安に感じる方は少なくありません。
甲状腺機能低下症は、疲労感や記憶力低下などの症状があるため、症状が重く生活に支障が出ているのであれば、障害年金を受給できる可能性は十分にあります。
申請を代行してもらえれば、本人に代わって医師に診断書作成を依頼してくれるため、自身で依頼するよりもポイントを押さえた内容の診断書に仕上げられます。
書類作成の代行はもちろん、申請者本人の状況に応じて遡及請求といった各種請求の可能有無の判断・提案も行ってくれるため、もらえるものがもらえなかったという事態を回避することも可能です。
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甲状腺機能低下症 障害年金でよくある質問
甲状腺機能低下症 障害年金でよくある質問として次の4つが挙げられます。
- 甲状腺機能低下症で障害年金を受給する際の要件は何ですか?
- 甲状腺機能低下症で障害年金は受給できますか?
- 甲状腺機能低下症で障害年金を受給する際のポイントは?
- 甲障害年金の申請代行先を選ぶ際のポイントは?
それぞれ詳しくみていきましょう。
【質問1】障害年金の受給要件は何ですか?
障害年金の受給要件は次の3つです。
- 初診日
- 保険料の納付状況
- 障害の状態
甲状腺機能低下症の症状が重く障害の状態と認められる状態であっても、「初診日」と「保険料の納付状況」を満たしていない場合は障害年金を受給できません。
【質問2】甲状腺機能低下症で障害年金は受給できますか?
障害年金の受給可否は生活にどれだけ支障が出ているかです。
甲状腺機能低下症の症状により生活に支障が出ていると認められれば、障害年金を受給できる可能性があります。
【質問3】甲状腺機能低下症で障害年金を受給する際のポイントは?
甲状腺機能低下症で障害年金を受給するためには、どれだけ生活に支障が出ているのかが分かる内容で書類を作成することです。
甲状腺機能低下症の障害年金受給事例を見ると、うつ病などを併発しているケースが多く、甲状腺機能低下症単独での受給事例はあまり見受けられません。
そのため、甲状腺機能低下症単独で受給を目指す場合は、どれだけ生活に支障が出ているのかが分かる内容で書類を作成する必要があります。
ただ、受給可否の重要書類である診断書は医師が作成するため、自身では作成できません。そのため、診察時に生活にどのような支障が出ているのかを詳細に伝えるなどして、実際の症状よりも軽い内容にならないようにしておく必要があります。
【質問4】障害年金の申請代行先を選ぶ際のポイントは?
障害年金の申請代行先を選ぶ際のポイントは次の5つです。
- 幅広くサポートしてくれるか
- 申請代行の経験年数・実績が豊富かどうか
- 明確な料金体系であるかどうか
- 出張面談など面談方法に選択肢があるか
- 担当者と相性が良くスピーディな対応可
上記ポイントを押さえて、障害年金の申請代行先を選ぶようにしましょう。
まとめ
「甲状腺機能低下症」をはじめとする甲状腺の疾患でも、障害年金を受給できる可能性は十分あります。
ただし、障害年金受給事例でも触れたとおり、障害年金は生活・仕事といった日常生活にどれだけ影響があるかで、受給有無や等級が決まります。
したがって、甲状腺疾患によってどれだけ生活に支障がでているのかをしっかりと整理しておくことが大切です。
鳥海社会保険労務士事務所は、千葉県流山市を中心に甲状腺疾患に関わる障害年金申請代行業務を行っています。
書類作成に自信がない、医師とのやりとりが上手くいっていなくて悩んでいるのであれば、専門家の意見などを交えながら、一緒に障害年金の受給を目指しませんか?
障害年金の受給を検討されている方はお気軽にご相談ください!
参考文献
一般社団法人日本内分泌学会-甲状腺機能低下症
岐阜赤十字病院-甲状腺機能亢進症
日本年金機構-第18節/その他の疾患による障害