うつ病エピソードで障害年金の受給は可能?
「うつ病エピソード」は障害年金の受給対象となっている精神疾患です。
したがって、うつ病エピソードで障害年金を受給することは可能です。
ただし、障害年金はその病気と診断されたからといって、受給可否が決定されるのではなく、障害の状態が障害等級に該当すると認められた場合に受給されます。
今回のテーマでいえば、うつ病エピソードによってどれだけ日常生活に支障が出ているかで受給可否が決定されるということです。
うつ病エピソードと診断されたからといって受給されるというわけではありません。
これがうつ病エピソードをはじめとする精神疾患で、障害年金を受給するのが難しい理由です。
うつ病エピソードで障害年金の受給が認められた事例
うつ病エピソードで障害年金の受給が認められた事例は多いです。
もちろん、しっかりとした書類作成が必要ですが、ここではうつ病エピソードで障害年金の受給が認められた事例をみていきましょう。
1.うつ病エピソードで障害厚生年金2級を受給
仕事のストレスや社内の対立関係による不安や抑うつ、不眠といった症状を訴えて精神科に受診したところ、うつ病と診断されたそうです。
診断当初は薬を服用しながら仕事を続けていたものの、徐々に症状が悪化し現在はうつ状態が重く、家族の全面的な援助が必要となっていました。
医師によって就労は止められている状態であったことから、厚生障害厚生年金2級の受給が認められています。
2.中等症うつ病エピソードで障害基礎年金2級を受給
職場の転勤による新しい人間界や業務内容の変更などによって、ストレスを感じるようになり、腹痛や耳が聞こえなくなるなどの症状からうつ状態へと変化したそうです。
ストレス増加による不眠や意欲低下なども顕著となり、短期間で体重減少し様子がおかしいことから精神科を受診した結果、うつ病と診断されました。
こちらの事例もうつ状態が重く、家族の全面的な援助が必要となっています。
また、症状の悪化によって入院するなど、医師によって就労が止められている状態だったそうです。
上記のような事例で障害基礎年金2級の受給が認められています。
3.うつ病エピソードで障害厚生年金3級を受給
パワハラを受けたことがきっかけで抑うつ状態となり休職、治療しようと病院を受診したところうつ病と診断されました。
治療していたものの、休職期間満了にともない会社を退職、食欲不振や倦怠感によって朝起きられない症状がある他、抑うつ状態が続いたことで家族のサポートがないと過ごせない状態だったそうです。
上記のような事例で、障害厚生年金3級の受給が認められています。
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「うつ病エピソード」とは?
「うつ病エピソード」とは、抑うつ状態や喜び・興味の喪失、疲労感の増大、活動性の減退といった症状のことです。
一般的には症状が2週間程度続くことが診断するうえで必要ですが、重症の場合は症状が急激に出るという場合、2週間経過しなくてもうつ病エピソードと診断されます。
うつ病エピソードの基本症状は次のとおりです。
- 抑うつ気分
- 興味と喜びの喪失
- 疲れやすくなる(易疲労性)または活動性の減少
少しは頑張れるものの、その後に強い疲労感があるといった症状もあります。
その他の症状は以下が挙げられます。
- 集中力と注意力の減退
- 自己評価と自信の低下
- 罪責感と無価値感
- 将来に対する希望のない悲観的な見方
- 自傷あるいは自殺の観念や行為
- 睡眠障害
- 食欲不振
現れる症状は人によって様々で、食欲不振や1ヶ月に体重が5%以上減る体重減少、性欲減退など、身体的な症状が見られることもあります。
また、自身を価値のない人間だと感じる「無価値観」や罪の意識に問われる「罪責感」などを感じる人も多く、重篤化すると自殺を考えてしまうのもうつ病エピソードの特徴です。
うつ病エピソードの診断基準
ここまで軽くうつ病エピソードの症状を解説しましたが、症状は診断基準によって以下4つの重症度に分かれます。
- 軽症エピソード
- 中等症エピソード
- 精神的な症状がない重症エピソード
- 重症エピソード
それぞれ詳しくみていきましょう。
軽症エピソード
軽症エピソードの診断基準は以下のとおりです。
- 基本症状のうち少なくとも2つ
- その他の症状のうち少なくとも2つを満たす
- 各症状が著しくない
軽症の場合、症状に悩み仕事や社会的活動を続けるのに困難を感じるものの、完全に機能できなくなるまでには至っていないという特徴が挙げられます。
中等症エピソード
中等症エピソードの診断基準は以下のとおりです。
- 基本症状のうち少なくとも2つ
- その他の症状のうち少なくとも3~4つ(望ましいのは4つ)
- 一部の症状が著しい
中等症の場合、社会的・家庭的活動や仕事を続けていくのが困難になってしまうでしょう。
重症エピソード
重症エピソードは軽症や中等症と違い、以下2種類に分類されます。
- 精神病症状をともなわない重症うつ病エピソード
- 重症エピソード
重症エピソードの場合、精神病症状の有無を慎重に見極めなければなりません。
- すべての基本症状を満たす
- その他の症状のうち少なくとも4つ
- いくつかの症状が重症
精神運動の静止によって患者本人が正確に症状を伝えられない他、強い苦悩などが見られることが多く、重篤な症状の場合は自殺の危険性が高いといわれています。
診断基準は以下のとおりです。
- すべての基本症状を満たす
- その他の症状のうち少なくとも4つ
- いくつかの症状が重症
- 自責や貧困などの幻覚
- 汚物などの腐ったにおい・中傷してくる声などの妄想
混迷症状として緊急型統合失調症など別の病気の可能性もあるため、しっかりと識別する必要があります。
うつ病とうつ病エピソードの違い
「うつ病」はうつ病エピソードと呼ばれる気分障害の総称です。
総称かどうかの違いであって、両者はほぼ同じものです。
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まとめ
うつ病エピソードでも障害年金を受給することは可能です。重症度にもよりますが、経験や受給事例を見る限り、障害年金2級~3級の受給認定が下りる可能性は高いでしょう。
ただし、重症度が高くても、生活にどれだけ支障が出ているのかしっかりと伝えなければ、障害年金の受給は難しくなってしまいます。
したがって、受給認定される確率を高める障害年金の申請書を作成するためには、医師を信頼し症状や日常生活の状況をしっかりと伝えておくことが大切です。
書類作成に自信がない、医師とのやりとりが上手くいっていなくて悩んでいるのであれば、専門家の意見などを交えながら、一緒に障害年金の受給を目指しませんか?
障害年金の受給を検討されている方はお気軽にご相談ください!
参考資料
厚生労働省-ICD-10精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン 第1回義肢等補装具専門家会議次第
F32うつ病エピソードの診断基準