高次脳機能障害とは?
高次脳機能障害は、脳卒中や交通事故などによる脳の損傷により、後遺症として現れる認知機能の障害です。
記憶力の低下や注意力散漫、感情のコントロールが難しくなるなど、日常生活に支障をきたす症状が特徴的です。
この障害は外見からは分かりにくいため、「見えない障害」とも呼ばれ、周囲の理解が得られにくく、本人も家族も苦労することが少なくありません。
高次脳機能障害の症状
高次脳機能障害の代表的な症状は次のとおりです。
症状 | 説明 |
---|---|
記憶障害 | 新しい情報を覚えることが難しく、日常生活での出来事や約束を忘れやすい。 |
注意障害 | 注意力が散漫になり、一つの作業に集中することが難しい。複数のタスクを同時にこなすことが困難。 |
遂行機能障害 | 計画を立てて実行する能力が低下。目標設定や段階的な行動が難しくなる。 |
社会的行動障害 | 感情のコントロールが難しく、突発的な感情表現が増える。他人とのコミュニケーションに支障が出る。 |
その他の症状 | 言語障害、視覚認知障害、空間認知障害など。 症状は個人差が大きく、複数の症状が同時に現れることもある。 |
これらの症状は外見からは分かりにくいため、周囲の理解を得ることが難しい場合があります。
また、人によって症状は異なるため、適切な支援を受けるには、自分に現れている症状がなにかを理解しておくことが重要です。
高次脳機能障害が仕事にどのような影響を与えるのか?
高次脳機能障害は日常生活だけでなく、仕事にも大きな影響を与えます。
例えば、記憶障害や注意障害が出ている場合、業務の手順を覚えることが難しくなったり、集中力が低下したりするため、業務の遂行に支障をきたす可能性があります。
また、社会的行動障害が出ている場合、感情がコントロールできないため、コミュニケーションがうまくとれず、孤立してしまうリスクも高いです。
そのため、高次脳機能障害を抱える方は、自分の特性を理解し、それに合った仕事を選ぶことが求められます。
高次脳機能障害を発症している人に向いている・向いていない仕事
高次脳機能障害を発症すると、今までできていた仕事ができなくなるリスクがあります。
そのため、高次脳機能障害のある人が長く働きつづけていくためには、なるべく向いている仕事に就かなければなりません。
- 向いている仕事の特徴
- 向いていない仕事の特徴
ここでは、上記2項目にわけて解説していきます。
向いている仕事の特徴
向いている仕事の特徴 | 説明 |
---|---|
単純作業が中心の仕事 | 記憶障害や注意障害がある方には、複雑な作業よりも単純な繰り返し作業が適しています。 例:データ入力、商品の仕分けや梱包、清掃業務など。 |
マニュアル化された仕事 | 手順が明確で、マニュアル化された仕事は取り組みやすいです。 例:レジ打ち、商品陳列、簡単な製造ライン作業など。 |
静かな環境での仕事 | 騒がしい環境は集中力を乱す可能性があるため、静かな環境での仕事が適しています。 例:図書館での業務、バックヤードでの作業など。 |
時間に追われない仕事 | 時間的プレッシャーの少ない仕事が望ましいです。 例:園芸や農作業など、自分のペースで進められる仕事。 |
向いていない仕事の特徴
向いていない仕事の特徴 | 説明 |
---|---|
複数のタスクを同時にこなす必要がある仕事 | 注意の分配が難しい場合があるため、マルチタスクを要する仕事は避けた方が良いでしょう。例:接客を伴う調理業務、複数の案件を並行して進めるプロジェクトマネージメントなど。 |
高度な判断力や臨機応変な対応が求められる仕事 | 遂行機能障害がある場合、状況に応じた柔軟な判断が難しいことがあります。例:営業職、管理職など。 |
長時間の集中力を要する仕事 | 注意障害がある場合、長時間の集中が難しいことがあります。例:プログラミング、精密機器の組み立てなど。 |
ストレスの多い仕事 | 感情のコントロールが難しい場合があるため、ストレスの多い仕事は避けた方が良いでしょう。例:クレーム対応、締め切りの厳しい仕事など。 |
ただし、上記はあくまでも代表例であり、人によって向いている仕事・向いていない仕事は異なります。
長く続けられる仕事を選ぶためには、個人の特性や興味、そして残存能力を正確に把握することが重要です。
仕事探しが不安な方は、医療機関やハローワーク、就労支援施設などの専門家に相談しながら、自分に合った仕事を見つけていくことをおすすめします。
高次脳機能障害を発症している人の仕事の探し方
高次脳機能障害を発症している人の代表的な仕事の探し方は次の4つです。
- ハローワーク
- 就労移行支援
- 行政サービス
- 障害者専用の転職サービス
それぞれ詳しく解説します。
ハローワーク
ハローワークは、全国に展開する公共職業安定所です。
地域の求人情報を幅広く収集しているため、近場で自分に合った仕事をみつけることが可能です。
また、ハローワークには、障害者枠求人専門窓口が設けられています。
この窓口を利用すれば、相談・カウンセリングなどの就職支援を受けながら適切な職場を探せます。
障害者職業能力開発校
障害者職業能力開発校は、高次脳機能障害をはじめとする障害者向けに教育プログラムを提供している施設です。
このプログラムを受けることで、自分に向いている職種の実践的な技能や知識を習得できる他、就職活動に役立つスキルアップが図れます。
また、この学校では専門家から直接指導を受けられるため、自信を持って就職活動に臨めます。
就労移行支援
就労移行支援は、障害者が一般企業での就労を目指すための支援サービスです。
就労移行支援を利用すれば、パソコンスキルやビジネスマナー、軽作業など、個々の能力や希望に応じた職業訓練を受けられます。
いきなり新しい職場に挑戦するのが苦手という方には、特におすすめです。
就労継続支援
就労移行支援は、障害者が一般企業で働くための準備として利用できるサービスです。
この支援では、就職活動に必要な知識やスキルを身につける訓練がおこなわれ、自分自身の特性について理解し、それに基づいた適切な職場選びができるようサポートされます。
自分1人でおこなうよりも多くの情報と助言が得られるため、大変有効です。
また、実際の職場で必要となる配慮についても学べるため、自信を持って就職活動に臨めます。
行政サービス
高次脳機能障害がある方は、障害者の就業をサポートする行政サービスを受けられます。
東京都の場合、「東京都障害者就労支援センター」などが該当します。
行政サービスは各ジャンルの保健福祉・教育・雇用などの連携拠点であるため、地域に根ざした支援を提供しているのが特徴です。
また、相談者の状況に合わせて適切な相談先・支援先を紹介してくれるため、より包括的なサポートを受けながら就業を目指せます。
ただし、提供している行政サービスは自治体によって異なるため、利用可能な支援サービスについてはお住いの自治体のWebサイトや福祉課に問い合わせて確認してみてください。
障害者専用の転職サービス
障害者専用の転職サービスも、高次脳機能障害を持つ方にとって有効な手段です。
例えば、「アットジーピー」などのWebサイトでは、障害者向けの求人情報を提供しています。
これらのサービスは、障害者に理解のある企業の求人が多く掲載されているため、高次脳機能障害のある方でも安心して応募が可能です。
また、サービスによっては専門のキャリアアドバイザーによる就労支援や、適切な職場の紹介をしてくれます。
高次脳機能障害を持つ方が仕事を探す際には、これらの支援サービスを積極的に活用することをおすすめします。
高次脳機能障害の人が仕事探しを成功させるためのポイント
高次脳機能障害を抱える方が仕事探しを成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
これらのポイントを押さえることで、より安定した就労の実現が可能です。
ここでは、高次脳機能障害の人が仕事探しを成功させるためのポイントを解説します。
医療機関と連携を取る
高次脳機能障害の方が仕事探しを成功させるためには、医療機関との連携が非常に重要です。
専門医や作業療法士、言語聴覚士などの医療専門家と定期的に相談することで、自分の症状の変化や回復の程度を正確に把握できます。
また、医療機関では、リハビリテーションの進捗状況や就労に向けての準備状況などを評価してもらえるため、自分の現在の状態に適した仕事を探せます。
症状を理解し仕事復帰までの道筋を立てる
高次脳機能障害の症状を正確に理解し、それに基づいて仕事復帰までの道筋を立てることが重要です。
症状には記憶障害、注意障害、遂行機能障害などがありますが、これらがどのように仕事に影響するかを把握しておく必要があります。
自分の症状と仕事の内容を照らし合わせ、どのような配慮や工夫が必要かを事前に考えておくことで、より適切な職場選びや職場での配慮依頼につながります。
また、段階的な復帰計画の立案により、無理ない就労の促進が可能です。
職場の理解を得る
高次脳機能障害の方が安定して働くためには、職場の理解を得ることが非常に重要です。
自分の障害について適切に説明し、必要な配慮を伝えることで、より良い就労環境を整えられます。
まずは、人事担当者や上司に対して、高次脳機能障害の特性や自分の症状について具体的に説明しましょう。
例えば、「記憶障害があるため、重要な指示はメモに書いてほしい」といった具体的な配慮事項を伝えると効果的です。
職場の理解と協力を得ることで、より安定した就労生活を送れます。
高次脳障害の人が利用できるサポート制度
高次脳機能障害の方が社会復帰や就労を目指す上で、さまざまなサポート制度を利用できます。
これらの制度を適切に活用できれば、より円滑な社会復帰や就労が可能です。
ここでは、高次脳障害の人が利用できるサポート制度について解説します。
生活訓練プログラム
生活訓練プログラムは、高次脳機能障害の方が日常生活や社会生活に適応するためのスキルを身につけるためのプログラムです。
このプログラムでは、記憶力の向上、注意力の改善、コミュニケーション能力の強化など、様々な訓練を受けられます。
これらの訓練を通じて、日常生活や就労に必要なスキルを段階的に習得可能です。
障害者手帳
障害者手帳は、高次脳機能障害の方がさまざまな福祉サービスや支援を受けるために必要な公的な証明書です。
障害者手帳を取得すれば、就労支援や経済的支援、障害者雇用、医療費の助成など、多くの支援を受けられます。
手帳の等級は症状の程度によって1級から3級まであり、等級に応じて受けられるサービスが異なりますが、障害者手帳を取得すれば、より充実した支援を受けることが可能です。
経済支援制度
高次脳機能障害の方が利用できる経済支援制度を利用すれば、経済的な不安を軽減し、より安定した生活を送れます。
代表的な経済支援制度としては、自立支援医療(精神通院医療)や重度障害者医療費助成制度がありますが、生活費の負担を軽減できる支援制度として有名なのが障害年金です。
なお、別記事でも高次機能障害で利用できる支援制度を紹介しておりますので、参考にしてみてください。
高次脳機能障害で障害年金の受給は可能
高次脳機能障害を抱える方の生活の安定を手助けしてくれる制度が障害年金です。
障害年金とは、病気・ケガによって生活・仕事に制限が生じた際、受給できる公的年金で、受給対象であれば現役世代でも受給できる可能性があります。
高次脳機能障害は外見からは分かりにくい障害ですが、日常生活や就労に大きな影響を与えるため、障害年金を受給できる可能性は十分にあります。
高次脳機能障害の方が障害年金を受給できれば、経済的な不安を軽減できるため、リハビリテーションや就労支援に専念することも可能です。
高次脳機能障害で障害年金を受給するなら専門家の申請代行がおすすめ!
「障害年金の受給確率を少しでも高めたい」「申請する負担を軽減させたい」という方は、障害年金専門社会保険労務士に申請を代行してもらうのがおすすめです。
相談時にしっかりとヒアリングをするため、相談者様の状況に最適な内容で受給申請することが可能です。
専門家に相談すれば、申請に必要な各種書類の作成を代行してくれる他、診断書内容を添削してくれるため、素人が申請するよりも受給確率を向上させられます。
また、医師との交渉ができないという場合は、申請者本人に代わって、医師に診断書作成を依頼してくれます。
障害年金の等級や受給確率を少しでも高めたいのであれば、専門家に障害年金の申請を代行してもらうのがベストです。
障害年金の申請を自力で行うことは可能?自力で可能な場合と社労士に依頼した方がよい場合も解説!
障害年金の申請を自力で行うことは可能です。しかし、障害年金の申請は専門性が高いため、知識がない方がイチから申請しようとすると手間や労力がかかる他、受給確率が下がるリスクがあります。当記事では自力申請が難しい理由や自力申請した方がよい場合などについてみていきます。
高次脳機能障害での障害年金受給事例
高次機能障害での障害年金受給事例は次のとおりです。
くも膜下出血が原因での高次脳機能障害で障害基礎年金2級
脳梗塞による高次脳機能障害で障害厚生年金2級
脳出血による高次脳機能障害で障害基礎年金1級
障害の状態によって受給可否は変わるため、上記傷病で高次脳機能障害が発症したところで必ず受給できるわけではありません。
しかし、高次脳機能障害の受給事例は多いため、ポイントを押さえて申請すれば障害年金受給できる可能性は十分にあります。
「高次脳機能障害 向いている仕事」でよくある質問
「高次脳機能障害 向いている仕事」でよくある質問は次の3つです。
- 高次脳機能障害で障害者雇用は可能?
- 高次脳機能障害で働くためのポイントとは?
- 高次脳機能障害で障害年金を受給するためのポイントとは?
それぞれ詳しく解説します。
高次脳機能障害で障害者雇用は可能?
高次脳機能障害を持つ方でも、障害者雇用は可能です。
障害者雇用では、個々の障害特性に応じた配慮がなされるため、働きやすい環境が整っています。
ただし、障害者雇用で働くためには、障害者手帳を取得しておく必要があります。
障害者手帳は取得までに時間がかかるため、障害者雇用を目的に取得する場合はなるべく早く申請手続きすることが大切です。
高次脳機能障害で障害年金を受給するためのポイントとは?
障害年金には受給審査が設けられており、その審査によって受給可否および障害等級が決定します。
そのため、高次脳機能障害と診断されたからといって、必ず障害年金を受給できるわけではありません。
高次脳機能障害で障害年金を受給するためのポイントは次のとおりです。
- 医師と綿密なコミュニケーションを取る
- 障害の程度や日常生活への影響の詳細が記載された診断書かチェックする
- 高次脳機能障害の症状を把握し、症状に合った診断書を用意する
- 診断書との整合意識を意識しながら病歴・就労状況等申立書を正しく作成する
高次脳機能障害における障害年金の受給確率を高めるためには、これらのポイントを意識しなければなりません。
不安な場合や、不明な点がある場合は、専門の相談機関に問い合わせることをおすすめします。
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高次脳機能障害 向いている仕事 まとめ
高次脳機能障害のある方でも、就労することは十分可能です。
ただし、高次脳機能障害は人によって現れる症状が異なる他、症状によって向いている仕事と向いていない仕事があります。
無理のない範囲で長く働くためには、症状に適した仕事に就くことが大切です。
また、経済的な不安が拭えないという場合、障害年金の受給を目指すというのも1つの手段です。
鳥海社会保険労務士事務所は、千葉県流山市を中心に高次脳機能障害に関わる障害年金申請代行業務を行っています。
書類作成に自信がない、医師とのやりとりが上手くいっていなくて悩んでいるのであれば、専門家の意見などを交えながら、一緒に障害年金の受給を目指しませんか?
障害年金の受給を検討されている方はお気軽にご相談ください!