脳出血患者の退院後の生活の実情
脳出血患者の退院後の生活の実情を次の3項目に分けて解説します。
- 運転の可否
- 飲酒の可否
- 脳血管疾患患者の生活は退院時が最大
それぞれ詳しくみていきましょう。
運転の可否
脳出血の後遺症は身体麻痺や視野・視力障害など多岐にわたるため、脳出血の退院後に運転できるかどうかは人によって様々です。
また、高次脳機能障害に関する報告では、脳出血を発症した患者2名のうち、1名は問題なく運転できました。
しかし、もう1名は高次脳機能障害の症状である注意障害により、対向車や信号への注意が欠けていることから運転ができなかったそうです。
飲酒の可否
過度な飲酒は脳出血の発症リスクを高めますが、適度な飲酒は脳出血の発症リスクを低下させる効果があることが海外の論文で明らかになっています。
また、「脳梗塞後の適度な飲酒ならいいのではないか?」という報告も日本の研究から明らかになりました。
そのため、適度な飲酒は血管の炎症を抑えるため、脳梗塞発症後も良い影響を与えるのではないかとも考えられています。
ただし、この研究で言及しているのは「脳出血」ではなく「脳梗塞」である他、適度な飲酒といってもアルコールの分解力には個人差があるため、飲酒して問題ないと結論付けるのは性急です。
また、右半身もしくは左半身に麻痺が残った状態で飲酒してしまうと酔いによる転倒を誘発してしまいます。
半身が麻痺してる場合、転倒時は両手で身体をかばえませんし、自力では立てないため、思わぬ大事故に発展しかねないことから、脳出血退院後は自己判断での飲酒はおすすめしません。
脳血管疾患患者の生活は退院時が最大
「脳血管疾患患者における回復期リハビリテーション退院後の日常生活活動能力の変化及び関連因子に関するアンケート調査」によれば、脳血管疾患患者の生活能力は退院時が最大であるといわれています。
そのため、脳出血における退院後の生活能力を少しでも高いものにするには、退院前の退院支援および、退院から日常生活に移る際の周囲のサポートが欠かせません。
脳出血患者の退院後の生活相談窓口
脳出血退院後の代表的な生活相談窓口は次の2つです。
- 病院の医療ソーシャルワーカー
- 各自治体の地域包括支援センター
悩み・課題を抱えた場合は、上記窓口への相談をおすすめします。
介護にかかる期間や費用・脳出血の入院にかかる費用
スマート脳ドックが介護された190人を対象に実施したアンケートによれば、介護が続いた期間は「1年以上5年未満」が約43%ともっとも多い回答だったそうです。
次いで、「1年未満」および「5年以上10年未満」がそれぞれ約20%だった他、調査結果全体の3割が5年以上介護していることも判明しています。
続いて介護費用です。
介護費用は100万〜300万円未満が約32%と最多で、100万円未満が約25%、300万~500万円未満が約19%でした。
また、このアンケート結果により、300万円以上の介護費用がかかっている方は全体の4割を占めていることも分かっています。
退院後の生活に不安があるなら障害年金の受給がおすすめ
脳出血による後遺症が重篤な場合、これまでのような生活はできません。
本人はもちろんのこと、介護期間が長くなれば配偶者も介護に時間を割かなければならないため、これまでどおりに仕事ができなくなります。
一方、介護費用は約40%の確率で300万円を超えてくることから、収入が減って支出がかさむ事態となり、退院後の生活に不安を覚える方は少なくありません。
このような時におすすめなのが障害年金の受給です。
障害年金とは、病気・けがによって生活・仕事に制限が生じた際、現役世代でも受給できる年金のことです。
障害年金を受給できれば、生活するための所得保障として年金を受け取れるため、収入が得られないお金の不安を少なからず低減できます。
また、診断書や受診状況等証明書、病歴・就労状況等申立書といった様々な書類を準備しなければならないため、初心者がイチから申請準備するのはハードルが高いです。
効率よく手続きを行いたい、申請の負担をなくしたいという方は、障害年金の申請代行を専門家に依頼することをおすすめします。
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脳出血 退院後の生活でよくある質問
脳出血 退院後の生活でよくある質問は次の3つです。
- 脳出血患者が退院後の生活で注意すべき点とは?
- 脳出血で入院している間に準備しておくべきことはありますか?
- 脳内出血だといつから障害年金の申請が可能?
それぞれ詳しく解説します。
1.脳出血患者が退院後の生活で注意すべき点とは?
脳卒中全体の再発率は10年で51.3%、脳出血は55.6%といわれています。
脳出血をはじめとする脳卒中の再発を防止するためには、退院後の身体機能および日常生活動作能力をなるべく維持しなければなりません。
そのため、運動量を確保したり、後遺症のリハビリ環境を整備したりするなどして、身体を動かす意識を持つ必要があります。
2.脳出血で入院している間に準備しておくべきことはありますか?
脳出血で入院している間に準備しておくべきことは次のとおりです。
- 相談窓口を確保する
- 介護保険の申請・ケアマネージャーへ依頼する
- 退院後の課題がないか試験的に外出・外泊する
- 住宅改修が必要かどうか確認する
- 退院先を選定する
- 介護体制を整備する
入院している間に障害年金のポイントを押さえた準備ができれば、障害年金の受給をスムーズに進められる他、より高い障害等級で受給できることも期待できます。
3.脳出血だといつから障害年金の申請が可能?
障害年金は原則、初診日から1年6ヶ月経過(障害認定日)しないと申請できません。
しかし、脳梗塞は機能障害の回復が医学的に見込められない場合、初診日から6ヶ月経過すれば障害認定日として認められる場合があります。
そのため、脳出血による後遺症が重度で回復が見込まれず症状が固定された場合、初診日から最短6ヶ月で障害年金の申請ができます。
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障害年金の申請を自力で行うことは可能です。しかし、障害年金の申請は専門性が高いため、知識がない方がイチから申請しようとすると手間や労力がかかる他、受給確率が下がるリスクがあります。当記事では自力申請が難しい理由や自力申請した方がよい場合などについてみていきます。
まとめ
脳出血退院後の生活は人によって様々です。
しかし、後遺症の症状や重篤度によっては、運転ができず移動に制約が生じる他、介護期間も長くなり、介護費用もかかります。
このような状態でも生きていくためにはお金が必要ですが、後遺症が重篤で仕事ができず、収入が確保できないという方は多いです。
収入が確保できず、脳出血の退院後の生活に不安を感じているのであれば、障害年金の受給をおすすめします。
日本は脳血管疾患の罹患者数が多いため、脳出血に関する障害年金の申請数も多く、事例も豊富なことから受給ハードルは低いです。
そのため、しっかりと書類の準備ができれば、障害年金を受給できる可能性は十分にあります。
鳥海社会保険労務士事務所は、千葉県流山市を中心に脳梗塞・脳出血といった脳疾患に関わる障害年金申請代行業務を行っています。
書類作成に自信がない、医師とのやりとりが上手くいっていなくて悩んでいるのであれば、専門家の意見などを交えながら、一緒に障害年金の受給を目指しませんか?
障害年金の受給を検討されている方はお気軽にご相談ください!
参考文献
Differing association of alcohol consumption with different stroke types: a systematic review and meta-analysis
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