発達障害で障害年金を受給できる可能性はある?
障害年金は病気やけがはもちろん、発達障害など生まれ持った病気などで障害のある人も受給できます。
したがって、発達障害により生活・仕事への支障度合いが障害年金の支給要件を満たしていると判断されれば、発達障害でも障害年金の受給が可能です。
発達障害で障害年金を受給する際の3つの基準
発達障害で障害年金を受給する際の基準は次の3つです。
- 発達障害の認定基準
- 等級判定ガイドライン
- 就労内容
それぞれ詳しくみていきましょう。
発達障害の認定基準
発達障害の障害認定基準は「第8節/精神の障害」の発達障害の項に記載されています。認定基準は次のとおりです。
障害程度 障害の状態 1級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの 2級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの 3級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの
等級判定ガイドライン
障害年金の受給審査において「等級判定ガイドライン」が設けられました。
等級判定ガイドラインとは、日常生活の能力の程度と日常生活能力の判定をもとに点数を算出し、障害等級の目安をつけるものです。
新規受給申請や再認定、額改定請求時に運用され、このガイドラインで算出された等級目安だけで受給有無や等級が決定されるわけではありません。
ただし、受給判定に大きな影響を与えることは間違いないでしょう。
就労内容
仕事ができていると日常生活能力が高いもしくは向上したと判断されやすく、仕事をしているという理由で障害年金が不支給・支給停止になることも多いです。
したがって、就労系障害福祉サービスや保護的な環境でシンプルな作業を繰り返しているなど、就労内容を詳しく伝える必要があります。
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そもそも発達障害とは?
「発達障害」は先天性(生まれつき)の脳機能障害です。生まれつきにみられる脳の働き方の違いで、幼少時より情緒面・行動面に特徴があります。
発達障害には以下のようなものが挙げられます。
- ADHD(注意欠陥・多動症)
- 自閉スペクトラム症
- LD(学習障害)
- 吃音
- チック症
発達障害の定義
発達障害支援法では、発達障害を次のように定義しています。
この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう
法律によって発達障害は定義されているものの、次の画像のとおり、障害の特徴はそれぞれ少しずつ重なっているため、明確に分類・診断するのは難しいのが現状です。
また、年齢・環境によっても目立つ症状は異なるため、診断時期によっては診断名が異なることもあります。
障害度合いを見た目で判断できない
半身まひや寝たきりなどの重度身体障害などは見ただけで障害状態を把握できますが、発達障害は見た目だけでは障害度合いを判断できません。
特に発達障害は、見た目は普通で身体的特徴も少ないため、深く関わらないと障害状態を理解しにくいのが現状です。
このような現状もあり、障害年金の受給まで至らないことも少なくありません。
発達障害で障害年金を受給するためのポイント
発達障害で障害年金を受給するためのポイントとして次の2つが挙げられます。
- 社会的障害を意識する
- 発達障害の専門医をかかりつけ医にする
それぞれ詳しくみていきましょう。
社会的障害を意識する
障害者基本法の第2条で障害年金のいう「障害」が定義されています。
- 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
- 社会的障壁 障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
簡単にいえば、障害は「心身機能障害+社会的障害(障壁)」というわけです。
そのため、障害年金を受給するためには、申請時にどのような症状があり、その症状によって日常生活にどのような影響を出ているのかを記載しなければなりません。
例えば、母親の同行で受診し、食後毎に家族が薬を渡して服薬できている場合、診断書には通院と服薬はできていると記載されがちです。
しかし、障害認定してもらうためには、「母や家族がいなければ1人で受診できず、服薬できない」といった記載が求められます。
このように記載してもらうためには、障害者本人や家族が社会的障害を意識して医師に伝える、医師に社会的障害について理解してもらうことが重要です。
発達障害の専門医をかかりつけ医にする
発達障害の専門医をかかりつけ医にすることをおすすめします。発達障害は科学的な解明がされていないのはもちろん、治療法なども確立していない発展途上の分野です。
今後の研究次第で定義などが変化していく可能性は低くありません。
発達障害の専門医であれば、発達障害の最新治療を熟知している他、豊富な症例を持っているため、発達障害についてよく理解されています。
また、機能障害だけでなく、社会的障壁つまり日常生活・仕事にどのような影響があるのか理解している方が多いため、障害年金の受給につながる「診断書」を作成してくれる可能性が高いです。
発達障害で障害年金を受給した事例
発達障害で障害年金を受給した代表的な事例は以下のとおりです。
- 自閉症アスペルガーの方が障害基礎年金1級を受給
- ADHDの方が障害基礎年金2級を受給
- 自閉症の方が障害厚生年金2級を受給
上記以外にも様々な受給事例があります。
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まとめ
「発達障害」のような生まれ持った病気でも障害年金支給要件を満たしていると判断されれば、障害年金を受給できます。
ただし、寝たきりや麻痺といった目に見えてわかる障害と違い、発達障害は見ただけでは健常者との違いが分からず、理解されにくいのが現状です。
発達障害で障害年金を受給するには、「社会的障害(障壁)」つまり日常生活にどれくらい支障をきたしているのか整理し書類にまとめることが大切です。
受給するためのポイントも参考にしながら、障害年金の受給に取り組むとよいでしょう。
丁寧なヒアリングと障害年金への知見・経験を活かして、書類作成や医師との交渉などを、相談者様に代わって行い、障害年金受給のサポートを行っています。
発達障害で障害年金受給を目指しているけれど、医師に相談しても取り合ってもらえない、書類作成に自信がないといった方はぜひご相談ください。
参考文献
日本年金機構-国民年金・厚生年金保険 障害認定基準「第8節/精神の障害」
e-GOV法令検索「発達障害者支援法」第2条
e-GOV法令検索「障害者基本法」第2条