
人工透析は、一度始めると生涯継続が必要な治療です。「これから毎月いくらかかるのか」「生活はどう変わるのか」——こうした不安を抱える患者さんやご家族は少なくありません。
この記事では、年間医療費の全体像から、自己負担を大幅に減らせる公的助成制度、さらに多くの方が見落としている障害年金との組み合わせまで、まとめて解説します。
人工透析について
人工透析とは、腎臓の機能が低下し、体内の老廃物や余分な水分を自力で排出できなくなった場合に、機械や専用の液を使って代わりにろ過を行う治療です。
大きく2種類あります。
- 血液透析(HD):週3回・1回約4時間、医療機関に通院して行う。国内の透析患者の約9割が利用。
- 腹膜透析(CAPD):お腹の中に透析液を入れ、自宅で行える方法。通院は月1〜2回程度。
どちらも腎臓の機能を代替するものであり、治療をやめることは基本的にできません。
人工透析の年間医療費
血液透析の場合、1回あたりの医療費は約3万円です。標準的な週3回・月12回で計算すると、月額約40万円、年間では約480万円にのぼります。
腹膜透析の場合も、月額30〜50万円程度と同水準です。
「480万円」という数字に驚かれる方も多いと思います。しかし実際の自己負担額は、公的助成制度によって大幅に圧縮されます。
自己負担は「月1万円」まで下がる——特定疾病療養受療制度
人工透析が必要な「慢性腎不全」は、厚生労働省が定める特定疾病に指定されています。この制度を利用すると、窓口で支払う金額が1か月あたり原則1万円(一部の方は2万円)に抑えられます。
年間480万円の医療費が、年間12万円(月1万円×12か月) の自己負担になるということです。
上位所得者は月2万円
70歳未満で、以下のいずれかに該当する場合は、自己負担上限が月2万円になります。
- 国民健康保険加入者で、基礎控除後の総所得が600万円を超える方
- 社会保険加入者で、標準報酬月額が53万円以上の方
申請手順(3ステップ)
- 主治医に「特定疾病療養受療証交付申請書」へ記載・捺印してもらう
- 加入している健康保険の窓口(健保組合・協会けんぽ・国保など)に申請する
- 交付された「特定疾病療養受療証」を毎回の受診時に提示する
申請した月の初日から適用されます。透析開始後すみやかに手続きをしましょう。
さらに自己負担を減らす「重度障害者医療費助成制度」
人工透析を受けている方は、身体障害者手帳(腎臓機能障害) の交付を受けることができます。多くの場合、1級または2級に認定されます。
手帳を取得すると、都道府県・市区町村独自の重度障害者医療費助成制度を利用できます。特定疾病制度後の残った自己負担をさらに軽減でき、地域によっては自己負担がほぼゼロになるケースもあります。お住まいの窓口で確認しましょう。
「収入」を補う——透析患者は障害年金を受給できる可能性がある
通院による仕事への影響や体力的な制約から、透析後に収入が減少するケースは少なくありません。そこで重要になるのが障害年金です。
「仕事をしているから」「症状が軽いから」と諦めている方も多いですが、これは大きな誤解です。
人工透析は原則「2級」に認定される
日本年金機構の認定基準において、人工透析を実施している慢性腎不全は、原則として2級に認定されます。
透析自体が「腎臓機能を人工的に代替している状態」であり、日常生活に著しい制限があると判断されるためです。
「初診日」の落とし穴——糖尿病が原因の場合は特に注意
透析の原因が糖尿病性腎症の場合、初診日は透析開始日ではなく、糖尿病で初めて医療機関を受診した日になります。
糖尿病から透析に至るまで10〜20年かかることも多く、当時のカルテが廃棄されているケースもあります。専門の社会保険労務士への相談が有効です。
人工透析の特例
通常、障害年金の申請には「初診日から1年6か月後」を待つ必要があります。
しかし、人工透析を開始した場合は、開始から3か月を経過した日が障害認定日となる特例があります。
透析を始めたら、早めに申請の準備を進めましょう。
💬 人工透析の医療費・障害年金に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 仕事をしていると障害年金はもらえませんか?
仕事をしていること自体は、受給の絶対的な妨げにはなりません。
重要なのは「どのような配慮を受けながら働いているか」です。
短時間勤務・単純作業のみ・職場のサポートがある場合は、「労働能力に著しい制限がある」とみなされ、受給を継続できるケースが多くあります。
Q2. 透析を始める前の医療費は特定疾病制度の対象ですか?
対象外です。特定疾病療養受療証は人工透析の開始後に申請できる制度です。
透析前に行うシャント手術などには適用されません。
透析開始後、速やかに申請しましょう。
Q3. 更新時に「働いていること」をどう伝えればよいですか?
「フルタイムで働いています」とだけ伝えると、症状が改善したと判断されるリスクがあります。
診断書や「病歴・就労状況等申立書」には、受けている配慮(短時間勤務・指示は一度ずつ・頻繁な休憩など)を具体的に記載することが重要です。
実態を正確に伝えることが継続受給のポイントです。
Q4. 障害年金と就労移行支援は併用できますか?
はい、併用可能です。
障害年金で生活基盤を確保しながら、就労移行支援で働くための準備を進めることは非常に有効です。
Q5. 申請を自分でするのは難しいですか?
初診日の証明・診断書の取得・申立書の作成には専門的な知識が必要です。
特に糖尿病が原因の場合、初診日の特定が複雑になるケースが多いため、障害年金専門の社会保険労務士への相談を強くおすすめします。
多くの事務所で初回相談は無料で受け付けています。
まとめ——まず「無料相談」から始めよう
- 人工透析の年間医療費は約480万円だが、特定疾病制度で自己負担は月1〜2万円に抑えられる
- 身体障害者手帳を取得すれば、重度障害者医療費助成制度でさらに軽減できる可能性がある
- 人工透析を受けている方は障害年金2級以上に原則認定され、年間78〜249万円を受給できる
「自分は障害年金をもらえるのか」「申請の手続きはどうすればいいのか」——まずは専門家への無料相談から始めてみてください。
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